腫瘍に関連する完全長攪乱RNAの特徴付け

村川 泰裕

村川 泰裕

京都大学 高等研究院 ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)教授

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ヒトゲノムには、過去に感染したウイルスの痕跡である内在性ウイルス様配列が多く存在し、代々受け継がれています。これらの配列から転写されるRNAは、宿主細胞に十分適応しておらず、自身の生命システムを攪乱するRNA(perRNA)となる可能性があります。一方で、一部は新たな遺伝子として利用され、発生などで機能しています。近年、これらの内在性ウイルス様配列が、がんにおいて再び活性化されていることが報告されています。しかし、従来のRNA解析技術では、内在性ウイルス由来RNAの全体像を解析することが難しく、がん細胞内での発現や機能については十分に理解されていませんでした。そこで本研究では、内在性ウイルス由来RNAを正確に捉える新しいトランスクリプトーム解析技術を開発し、研究領域内の専門家と連携して、以下の未解決問題に挑みます。

  • がん細胞では、一体どれほど多様な内在性ウイルス由来RNAが発現しているのか?また、がん種ごとにどのような違いがあるのか?
  • それらのRNAは、がん細胞内でどのように認識・処理され、どのような機能を果たしているのか?
  • 悪性腫瘍で再活性化する内在性ウイルス由来RNAを基に、新たな診断法や治療法の開発は可能か?