計画班の河原らの研究成果がJ Neuroinflammationに掲載されました。

Hiroyuki Todo, Jingqi Yang, Tuangtong Vongpipatana, Toshiharu Shibuya, Taisuke Nakahama, Yukio Kawahara. Neuron-specific deletion of ADAR1 induces brain malformation and early postnatal lethality. J Neuroinflammation. 2026 Jul 3. doi: 10.1186/s12974-026-03941-w. Online ahead of print.

https://link.springer.com/article/10.1186/s12974-026-03941-w#article-info

研究成果の概要

ヒトを含めた哺乳類には、ウイルスなどに由来する外来性の撹乱RNAを認識するセンサー分子が発現しています。ウイルスなど異物が体内に侵入すると、この撹乱RNAを感知して自然免疫が活性化します。その結果、1型インターフェロン (IFN)が分泌され、ウイルスを排除するように作用します。こういった外来性撹乱RNAセンサー分子は、目印の付加された自己の内因性RNAには反応しません。しかし、内因性RNAへの目印付加などの機構に異常が生じると、センサー分子が内因性RNAを撹乱RNAと誤認し、自然免疫が異常活性化します。こうした自己の内因性RNAに目印を付加する仕組みの1つが、RNA編集酵素ADAR1による2本鎖RNAのイノシン化です。ADAR1には、自然免疫の異常活性化を抑制するADAR1 p150と機能不明なADAR1 p110の2つのアイソフォームがありますが、両アイソフォームの神経細胞における役割はよく分かっていませんでした。

本研究では、神経細胞特異的なADAR1欠損マウスを作製したところ、生後24時間以内に死亡することが分かりました。自然免疫の異常活性化により1型IFNが過剰産生され、更に脳室閉塞や脳室周囲でのグリア細胞の活性化が認められました。ADAR1 p150の機能だけを回復させるとこうした異常は消失しましたが、生後早期の致死性は回避できませんでした。また、ADAR1 p110の機能だけを回復させても生後早期の致死性は回避できませんでした。以上から、神経細胞のADAR1 p150とADAR1 p110の両方が個体の生存に必須の役割を果たしており、特にADAR1 p150は内因性RNAの攪乱化を抑制していることが分かりました。

神経細胞のADAR1の機能喪失は撹乱RNA制御破綻などにより生後の早期致死を引き起こす