Hia F†, Wu Y†, Yoshinaga M†*, Goto-Ito S†, Iwasaki W, Imami K, Toh H, Han P, Cai T, Ohira T, Fukao A, Standley DM, Shichino Y, Takegawa M, Fujiwara T, Suzuki T, Iwasaki S, Bassik MC, Ito T*, Takeuchi O*. (†Equal contribution, *Corresponding authors)
Human DHX29 detects nonoptimal codon usage to regulate mRNA stability.
Science. 2026 Mar 19:eadw0288. doi: 10.1126/science.adw0288. Online ahead of print.
コドンとは、細胞がタンパク質を合成する際にどのアミノ酸を使うかを指定する、3つの塩基からなる遺伝暗号です。ヒトのタンパク質は主に20種類のアミノ酸から構成されていますが、それらを指定するコドンは全部で61種類存在します。多くの場合、1種類のアミノ酸は複数のコドンによって指定されており、これらは「同義コドン」と呼ばれます。同義コドンのどれを使っても、最終的に作られるタンパク質の種類は同じです。しかし、どの同義コドンを使うかによって、タンパク質が作られる量が大きく変わることが知られています。特に「非最適コドン」を多く含むメッセンジャーRNA (mRNA)は、タンパク質が効率よく翻訳されず、さらにmRNA自体も分解されやすくなることがわかっています。このようなmRNA制御の異常は、生体機能の攪乱につながると考えられます。しかしヒト細胞において、このようなコドンの違いがどのように感知され、遺伝子発現が制御されるのかはわかっていませんでした。
本研究では、RNA結合タンパク質DHX29が、非最適コドンの翻訳を感知するセンサーとして働くことを明らかにしました。DHX29はタンパク質翻訳装置であるリボソームに結合し、非最適なコドンを多く含むmRNAを見分けていました。さらに、DHX29はmRNAの発現を抑制するGIGYF2・4EHPタンパク質複合体を呼び寄せることで、非最適コドンを多く含むmRNAの発現を抑えることを明らかにしました。
これらの結果から、DHX29はコドンの使い分けを読み取り、遺伝子発現を制御する重要な因子であることが示されました。コドンを介した制御は全てのタンパク質の産生に関わるため、本研究の知見は様々な生命現象の制御機構の理解や、その破綻によるmRNA異常を通じた生体機構の攪乱機序の解明につながる鍵の一つになると期待されます。
