ヒトゲノムの約6%を占めるサテライトDNAは、短い配列が多数繰り返されたリピート構造をもっています。サテライト領域は通常ヘテロクロマチンを形成して転写が抑制されていますが、特定のストレス条件や疾患状態で転写が誘導され、サテライトRNAとして細胞機能に多様な影響を及ぼしています。特に、熱ストレス時にサテライトIII領域から転写されるGGAAUリピート配列からなるHSATIII RNAは、核内ストレス体(nSB)と呼ばれる非膜オルガネラを相分離形成し、温度依存的なスプライシング制御を介して細胞に有益な機能を果たしています。
一方で、同一のGGAAUリピート配列をもつSCA31 RNAは、神経変性疾患の原因となる有害な撹乱RNAとして作用することが報告されており、同じ配列をもつRNAが状況に応じて相反する機能を発揮し得ることが示唆されています。本研究では、HSATIII RNAとSCA31 RNAにおける「機能性」と「撹乱性」を規定する分子機構を解明するとともに、ゲノムに内在する撹乱性を秘めたリピート配列RNAが、なぜあえて転写されるのかという生物学的意義に迫ります。
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