植物病原菌の宿主操作を担う分泌lncRNAの新規機能探索

田中 茂幸

田中 茂幸

摂南大学農学部 准教授

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 植物病原糸状菌は農業作物に深刻な被害をもたらす主要な病原体であり、その感染機構の解明は農学上の喫緊の課題です。私は、トウモロコシに感染する黒穂病菌が、数百種に及ぶ機能未知の長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)を、脂質膜からなる微小顆粒である細胞外小胞を介して分泌することを明らかにしました。さらに、その中には植物タンパク質と特異的に結合し、宿主細胞機能を攪乱することで感染を促進する病原性因子が存在することを見出しました。これは、植物病原糸状菌が分泌型lncRNAを感染過程における分子兵器として利用するという、新たな感染戦略の存在を示すものです。

 本研究では、細胞外小胞に内包されるlncRNAについて、感染過程における発現動態解析、網羅的機能スクリーニング、二次構造解析、ならびに宿主分子との相互作用解析を統合的に実施します。これらの結果を基盤として、複数の分泌型lncRNAが協調的に宿主のRNA代謝および免疫応答を攪乱する分子戦略を体系化し、RNAを主体とする新規病原性因子としてのperRNA概念の確立を目指します。