公募班の村上らの研究成果がNature Communicationsに掲載されました。

Kazuma Murakami*, Thi Hong Van Nguyen, Leo Tsuda, Esha Chawla, Yangxia Wang, Yiran Chen, Nadia Stefanova, Chioko Nagao, Kenji Mizuguchi, Shouvik Manna, Samir K. Maji, Hidehito Tochio & Gal Bitan.Development of an RNA aptamer as a therapeutic agent for synucleinopathies.Nature Communications 2026 July 15.doi: 10.1038/s41467-026-75209-z. Online ahead of print.

https://www.nature.com/articles/s41467-026-75209-z

研究成果の概要

α-シヌクレイン(αSyn)は、神経細胞においてシナプス機能を担う重要なタンパク質ですが、異常に凝集するとオリゴマーや線維状凝集体を形成し、プリオン様に脳内を伝播することで神経細胞障害を引き起こします。このようなαSynの異常凝集は、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症などのシヌクレイノパチーの共通病態です。現在利用されている治療法の多くは、ドパミン補充による症状改善を目的としたものであり、疾患進行を抑える根治的治療には至っていません。近年、認知症領域では抗体医薬などの疾患修飾薬が注目されていますが、抗体医薬とは異なる治療戦略も強く求められています。

本研究では、αSynの天然変性領域に存在するLys繰り返し配列を標的として、試験管内人工進化法(in vitro selection)によりRNAアプタマーを取得しました。その結果、このアプタマーはαSynのオリゴマー形成や線維形成を抑制するだけでなく、すでに形成された凝集体の分解も促進することを明らかにしました。また、細胞モデルではαSyn凝集体の細胞内伝播や細胞毒性を抑制し、ショウジョウバエモデルでは運動機能障害、寿命短縮、神経変性を改善しました。さらに、核磁気共鳴(NMR)解析およびドッキング計算により、RNAアプタマーがαSynのLys繰り返し配列を主な結合部位として認識する分子機構の一端を明らかにしました。以上から、RNAアプタマーはαSynの異常凝集とその伝播を直接制御する新たな疾患修飾型核酸医薬として有望であり、シヌクレイノパチーに対する新しい治療戦略につながる可能性があります。