公募班の廣瀬らの研究成果がMolecular Cellに掲載されました。

Tsuyoshi Ueno, Shungo Adachi, Ichiro Taniguchi, Nobuo N. Noda, Kensuke Ninomiya, and Tetsuro Hirose. Thermo-Sensing Mechanisms of Splicing Control by Nuclear Stress Bodies. Molecular Cell 2026 Jul 17. DOI: 10.1016/j.molcel.2026.06.034

https://www.cell.com/molecular-cell/fulltext/S1097-2765(26)00423-5

研究成果の概要

ヒト細胞は熱ストレスを受けると、核内に核内ストレス体(nSB)と呼ばれる膜のないオルガネラ(非膜オルガネラ)を形成します。nSBは熱ストレスから回復する過程で標的遺伝子の発現をRNAスプライシングの段階で制御することが知られていました。この過程では、熱ストレス時に脱リン酸化された不活性型スプライシング制御因子SRSFがnSB内に集積し、温度が正常に戻ったストレス回復期になると、SRSFのリン酸化酵素CLK1が取り込まれて、SRSFをnSB内で効率よくリン酸化し、再活性化します。このように、nSBはSRSFのリン酸化の酵素と基質を濃縮することで反応を促進する「るつぼ」として機能することが知られていました。しかし温度変化がどのようにCLK1のnSBへの集積を制御し、この「るつぼ機能」を作動させるのかは明らかになっていませんでした。

本研究では、CLK1が熱ストレス回復期にのみnSBへ集積する仕組みを解析し、CLK1のSer341リン酸化がこの局在制御の鍵であることを見出しました。さらに、このリン酸化状態がPP1(Protein Phosphatase 1)による脱リン酸化とRIOK2 (RIO Kinase 2) によるリン酸化によって制御されることを明らかにしました。さらに、全体が特定の決まった立体構造をとらない天然変性タンパク質で、PP1の阻害因子であるPPP1R2が温度を感知する新たな「温度センサー」であることを発見しました。PPP1R2は高温条件でPP1から解離し、温度低下に伴って再結合することが判明しました。この可逆的な結合変化によってPP1活性が温度依存的に変化し、CLK1リン酸化状態の制御を介してnSBの「るつぼ」機能の切り替えを実現していることが分かりました。

天然変性タンパク質PPP1R2は温度センサーとして働き、CLK1のリン酸化と核内ストレス体 (nSB) への局在化を制御します。その結果、nSBによるスプライシング制御が温度依存的に調節されます。